バランス感覚

小松和彦さんの『福の神と貧乏神』(ちくま文庫、親本は1998年)です。
福の神の伝説の考察なのですが、こうした伝承には、長者が没落するという話がついてまわるのだそうです。たいていの場合、欲におぼれて、「やりすぎ」をして、結果としてマイナスを呼び起こすというのです。(花咲か爺さんの話の、「隣の爺さん」のやったことなども、それにはいるのでしょう)
そうした形で、「過ぎたるは及ばざるがごとし」的な感覚が、人びとの間に伝わっているというのも、「右肩上がり」を単純に信じられない、過酷な過去があったことも事実でしょう。かつての日本では、一定程度人口が増えると、どこかで「飢饉」が起きて、結果的に人口調整がおこなわれるようなこともあったといいます。
一方で、「右肩上がり」を望むというのも、ある意味では人間本来の欲求でもあるのでしょうし、それが「進歩」をつくってきたのも事実だと思います。
地球規模でものを考えなければならない時代に、こうした伝承と、どう向き合うかも、課題でしょう。星新一さんの「おーい、でてこーい」でしたっけ。大きな穴にどんどん捨てていく話。それも連想してしまいました。