贅沢は敵だ

阿部彩さんの『子どもの貧困』(岩波新書、2008年)です。
「格差」ではなく、「貧困」が問題だという意識は、このところ少しずつではあっても、認識が共有されつつあるようですが、それがこどもの世界でどうなっているのかを、いろいろな調査を手堅く重ねながら、実態を明らかにしています。
その中でも衝撃なのが、〈すべての子どもに与えられるべきもの〉を社会がどう考えているかという調査なのです。〈貧困〉が、その社会の中で、ごく当たり前の生活ができない状態であるなら、なにが〈当たり前〉なのかが明らかにされなければなりません。
そこで、日本ではどうかという調査がおこなわれたのですが、〈希望するすべての子どもに絶対に与えられるべきである〉と答えた人の割合は、こうだというのです。(186・187ページに表があります)

  1. 朝食 91.8%
  2. 遠足・修学旅行などの学校行事参加 81.1%
  3. 高校教育 61.5%
  4. 絵本や子ども用の本 51.2%
  5. 大学・短大教育 42.8%
  6. お古でない文房具 42.0%
  7. お古でない靴 40.2%
  8. 誕生日のお祝い(プレゼントとかごちそうとか) 35.8%
  9. 年1回ほどの遊園地や動物園 35.6%
  10. お古でない服 33.7%
  11. お年玉 30.6%
  12. クリスマスプレゼント 26.5%
  13. 勉強机 21.4%
  14. 数年に1回の宿泊家族旅行 20.7%
  15. 子ども部屋(きょうだい同室も含む) 17.0%
  16. おけいこごと 13.4%
  17. 周囲のほとんどの子がもつスポーツ用品やおもちゃ 12.4%

いろいろな読み方ができるとは思いますが、こうした環境のなかに、今のこどもたちは生活しているわけですね。
三丁目の夕日』の映画も、〈なくても幸せ〉なんだから〈ないこと〉に不満をいうなという文脈に使われたら困りますよね。