バブルのはて

松井孝典さんの『地球進化論』(新版、岩波現代文庫、2008年、親本は1988年)です。
地球がどのようにして現在の姿になっていったのかを、太陽系のほかの惑星や衛星のようすと比較しながら書いたものです。
初版のときとは、冥王星の扱いだの、「恐竜絶滅」の隕石衝突の問題だの、いろいろと研究の深化もあるので、そうしたところが増補されています。
そうした時代の変化は、研究のベースも変えてきたのだなというのが、今回の印象なのですが、初版の当時は、まだソ連があったころで、火星探索をソ連も計画していたらしいのです。それに、松井さんたち日本も加わろうとして、こうしたというのです。
「日本で開発したカメラを探査機に搭載し、火星の風景と一緒に、探査機の表面に刻印された企業のロゴを地球に送り返したら、その映像のインパクトは計り知れない。開発費を宣伝費だと思えば安いものではないか、ということで研究者仲間を募り、その計画を進めることにした」(212ページ)
で、実際スポンサーも決まっていたというのですが、ソ連崩壊のために話がつぶれたというのです。このときには、そういうものにお金を出す度量が、企業のほうにもあったということでしょうか。