言い分と節度

ジョージ・オーウェルカタロニア讃歌』(岩波文庫、都築忠七訳、1992年、原著は1938年)です。
著者は、「トロツキスト」と呼ばれた、POUMの部隊に所属してスペイン戦争をたたかいました。そのため、戦闘の実態と、そのあとに来た共和国政府によるPOUMへの弾圧を、当事者として経験しています。
もちろん、「弾圧」した側にも言い分はあろうと思いますから、著者の経験は事実でしょうが、その奥にあるものは、まるごとうのみにすることはできません。ただ、こうした対立をはらみながら、共和国がフランコ勢力とよくたたかったことは、きちんと見なければならないのでしょう。
一方では、ゲルニカ空爆のように、あきらかにドイツ軍がかかわっていたような攻撃もあったわけですから。その点では、いろいろと複雑な要素もあったのでしょう。
ただ、意見の対立や路線の違いに関して、批判のレベルには問題があったのかもしれません。以前、ポール・ニザンについて書いたことがありましたが、彼がフランス共産党を離れた後、アラゴンなどはニザンをスパイ呼ばわりしたという、いやな事実もあったわけで、そうした傾向から、スペインの人たちが全く無縁だったとはいえないような気もします。「批判の自由と行動の統一」ということは、おたがいに気をつけなければいけないことだと思います。