頭をひやそう

しつこいようですが、水村美苗さんの『日本語が亡びるとき』です。
ふっと、ISBNコードをみると、978-4-480-81496-8となっています。ご存知の方も多いでしょうが、最初の978は、書籍をあらわす番号で、次の4が日本で刊行されたこと、その次の480は筑摩書房の出版社コードです。
最後の8はチェックコードなので、出版社の内部で独自につける番号部分は、「81496」になるわけですが、筑摩書房のなかで、この番号の位置づけはどういうものかということなのです。
実は「81---」という番号は、小説家のエッセイなどに主につけられています。
葉山嘉樹日記』(81020)・『本とつきあう法』(中野重治、81058)・『スペインの沈黙』(堀田善衛、81111)・『緑色の時間のなかで』(中村真一郎、81277)・『昭和の東京、平成の東京』(小林信彦、81440)などです。
一方、学術的なエッセイや評論、評伝などは、「82---」の番号が与えられています。
石川淳論』(野口武彦、82016)・『ことばの呪縛』(金石範、82043)・『宮本百合子』(中村智子、82058)・『《宮澤賢治》論』(天沢退二郎、82087)・『わが生涯と文学』(中野重治、82119)・『都市空間のなかの文学』(前田愛、82159)・『空の地図』(黒井千次、82201)・『火の山の物語』(中村真一郎、82251)・『後鳥羽院』(丸谷才一、82346)・『江藤淳と少女フェミニズム的戦後』(大塚英志、82347)というぐあいです。
となると、水村さんの本は、学問的なものとは、出版社のほうも考えていないということでしょう。水村さんが、くつろぎながら、不正確な、いいかげんな知識(どこがいいかげんかは以前書いていますので、再論しません)のもとに放談しているという性格のものということなので、真剣に、「間違ってますよ」などという必要もない。トンデモ本の一種として、「お好きにどうぞ」というところになるのでしょうか。