老舗

村田喜代子さんの『八つの小鍋』(文春文庫、2007年、文庫編集オリジナル)です。
作品自体は、いろいろな本に既に収められていますし、村田さんらしく、虚実のあわいに遊ぶというていのものですから、それはいいのですが、文春文庫という媒体が、こうした作品を刊行するところがおもしろいものだと思います。
そこはやっぱり、『文学界』を抱え、芥川賞を主宰している出版社ですから、それなりの文庫に対しても矜持があるというものなのでしょう。今の文春からは想像できないかもしれませんが、かつては文庫で『十二年の手紙』も出していたのですから。
こうした本は、新刊案内でも、隅っこのほうに出ていることが多いので、注意しないと見落とす危険があるので、そうしたことは気をつけなければいけないのでしょう。
でも、こうした本をみていくことで、出版社のほうでも、出していこうとする意欲が続くのかもしれません。