刷り込み

若桑みどりさんの『お姫様とジェンダー』(ちくま新書、2003年)です。
若桑さんは先年逝去されましたが、この本はある女子大学で、ジェンダー論の講義として、ディズニーのアニメなどを使ったときの記録や、そのときの学生の感想文を素材にしてまとめたものです。
読みどころは、講義を受けた学生の感想文をほぼ原文のまま収録していることで、そこに、2001年から2002年にかけての学生の意識がみえてくるのです。
すると、実は講義の最初、予備知識のない段階での感想文には、けっこうアニメの提示する世界観に対して、疑いをもっていない学生たちの姿がうかびあがってくるのです。『白雪姫』にしても、『眠り姫』にしても、そこに描かれた描写のうつくしさへの感動も、そうした「王子様」に対してのあこがれも、学生たちは、それまでの生活経験の中で抱えてきています。それが講義を受ける中で、徐々に変化していくのも読みどころではあるのですが、学生たちが、最初に刷り込まれた、「女の子のあこがれ」的なものの存在感ということに関して、考えずにはいられません。
そうした『刷り込み』は、どこにでもあるのかもしれません。「二大政党」がいいことだと、いったい誰が決めたのでしょう。「小選挙区制」で「首相を選ぶ」ことが総選挙の意義だと、いったい誰があとづけたのでしょうか。