同時代の感覚

アキハバラ発〈00年代〉への問い』(岩波書店)です。
例の「ともひろ」さんの起こした事件について、さまざまな人たちが、自分のフィールドから発言しているのですが、前に、『リアルのゆくえ』で紹介した東浩紀さんが、ここでも、インタビューに応じています。その中で、文学が機能していないという趣旨のことを発言しています。「作家は職業作家になり、文芸評論も完全にアカデミズムの中に閉じこもってしまった」と、言います。
たしかに、中堅どころからしたの書き手たちが、こうしたできごとに対して何かをいうということがなくなっているように感ぜられます。それは逆に、そうした言説を出す場がなくなりつつあることとか、そうした視野をもつ書き手が、それにふさわしい場が与えられないとか、そうした複雑な状況があるのかもしれません。
その中で、この本では平野啓一郎さんが、大澤真幸さん・本田由紀さんと鼎談をしていて、彼の『決壊』という作品についても語っています。本田さんは『決壊』を読んで「ひたすら恐ろしく、気が滅入りました」といいます。そうした形で、平野さんは今の時代にかかわろうというのでしょう。
そうした人たちの努力は可とするのですが、やはり、今回の議論のなかに見え隠れする「不在」のことも考えずにはいられません。そう、「関東自動車工業」です。