重層的

赤坂憲雄さんの対談集、『東北ルネサンス』(小学館文庫、2007年、親本は2003年)です。東北6県と新潟とで、赤坂さんが様々な方と、東北地方の歴史や風土について対談したものを集めたものです。
縄文時代は、北海道から沖縄まで、列島がいちおう縄文文化になっている、しかし弥生となると、いわゆる本土にしか弥生文化は広がらない。北東北にはアイヌ語地名が残っているのも周知のことですし、大野晋さんのタミル語説は、稲作文化とタミル語系のことばを携えて海を渡ってきたというものになっている。
そうした、複雑な状況のもとで、東北地方の文化のもつ意味を考えようというのが、赤坂さんの発想なのでしょう。個々の論点にはいろいろな意見も出るでしょうが、列島を近畿地方(考えてみれば、この用語自体がヤマト王権中心主義のことばですね。「畿」とは王城の地をさすことばですから)中心でとらえてはいけないという意識は、もっていなければいけないのでしょう。九州の縄文文化は、大噴火のためにいったん廃絶してしまったということですから、そうした被害のすくなかった東北地方は、文化を継承できていたのかもしれません。
石川啄木宮沢賢治は、岩手出身の作家として有名ですが、かれらの奥には、そうした過去の蓄積が無意識的にもあるのかもしれません。

東北といえば、今度の土曜日に、民主主義文学会が、盛岡で若い人向けの集会を開きます。『民主文学新人賞』の第1回佳作の浅尾大輔さんと、第7回佳作の三浦協子さんとが、話をするのだそうです。お近くの方はのぞいてみてください。