向き合う

文京洙さんの『済州島四・三事件』(平凡社)です。
1948年4月3日に起きた、済州島での武装蜂起事件と、その後の動きを追いかけています。4月3日の蜂起自体は、警察や右翼の人たちへの攻撃で、警察4人、右翼など8人、蜂起した側から2人、計14人の死亡者だということです。「武装隊」(蜂起側)は合計300人ほどだったというので、その最初の行動は、そんなに大きなものではなかったようです。
しかし、蜂起側は、5月10日という間近に迫った選挙をやめさせることを目的のひとつとしていました。この選挙は、アメリカ軍が進駐していた朝鮮の南半分だけでおこなわれた選挙で、この選挙のけっか誕生するのが大韓民国なのです。実際、済州島では、このときの選挙は実施できなかったというのです。
蜂起のあとにおきた弾圧が島の社会に与えた影響は、金石範さんの「鴉の死」などの作品で日本では早くから問題にされてきましたが、韓国でも、いまは実態の究明と、被害者への謝罪などがおこなわれているようです。(ただ、今の政権になってからトーンダウンしている向きもあるとか)
こうした、国家のなりたちにも影響するような事件に対しても、真相を究明しようとするのは、今の韓国のもつ、歴史への誠実さなのでしょう。そうした韓国の姿と、「日本海」という名称にこだわって、国際的にその名の使用をやめさせようとする動きとが、どうもしっくりつながらないのです。それは、竹島問題にかんしても、時には感じています。