さりげなく

『文学界』10月号の、佐藤優さんと伊藤潤二さんの対談の中に、葉山嘉樹の話題が出ています。「蟹工船」は「海に生くる人々」のパクリともいえるとか、いろいろとあるのですが、その中で、佐藤さんがいいます。

プロレタリア文学日本共産党系と非共産党系に分かれた時、小林多喜二共産党系についたけれども、葉山嘉樹は非共産党系だった。戦後は共産党系だけが正しい、ということで葉山は歴史から抹殺されてしまったんですね」

『抹殺』はないでしょう。1970年代に、葉山の文庫本を出していたのは岩波と新日本だけで、岩波の解説も蔵原惟人が書いていたのですから。

こういう形で、さりげなく「うそ」が混ざるのが、文芸誌での扱いなんですね。知らない人は事実だと思ってしまう。気をつけなければいけません。