ひいきにしても

永原慶二さんの遺著『苧麻・絹・木綿の社会史』(吉川弘文館、2004年)です。もともとは中公新書の『新 木綿以前のこと』(1990年)を増補する中で生まれた本なのですが、準備中に永原さんがなくなってしまい、現在の形でまとめられました。そういえば、この年は年始に網野善彦さんも亡くなられて、日本中世史の研究者にとってはけっこう大変な年だったのでしょう。
この本を思い出したのは、島村輝さんが、こんなことを書いていたからです。
古来の〈麻〉は必ずしも大麻だけではなく、苧麻(からむし)があり、単に〈布〉の場合は苧麻を指す場合も多かったことを、永原さんの本でみていた記憶があったので、思い出してしまいました。
麻は大麻も使われてはいましたが、香木のように火にくべて煙を吸引するような対象ではありません。そこからさらに、大麻規制を(吸引だけを処罰の対象にしていないのは、日本国もですが、そこはおきましょう)、思想犯と同列におくというのは、少し筆がすべったのではないでしょうか。