コミットメント

大塚英志東浩紀の対談『リアルのゆくえ』(講談社現代新書)です。
ふたりの、2001年・2002年・2007年・2008年の対談をあつめたものなのですが、実は、けっこう読みづらい本です。というのも、両者の見解の相違がはなはだしく、その対立に終始している2007年の対談が、けっこう不毛な論理の繰り返しになっている面があるのです。
ものすごく乱暴にまとめれば、社会との通路をなんとかしようとする大塚さんと、そんなものなくてもいいという東さんとの差なのですが、そのちがいが、大塚さんの提起を東さんがはぐらかしているようにも見えるのは事実です。
けれども、秋葉原の「ともひろ」さんの事件のあとの対談では、東さんが、このことは自分たちの世代の論客が引き受けなければいけないことだという感覚をもったというので、それはひとつの注目すべき転換なのかもしれません。
大塚さんが、五日市の例の死刑を執行されてしまったひとにかかわったことが、彼の論立てに影響したことはまちがいのないところですから。