重い思い

増田勝さんの『成田で』(民主文学館、光陽出版社発売)です。
増田さんは岐阜県出身、中学卒業後名古屋で就職して、名古屋の民主主義文学運動を支えてきたかたです。そのため、本に収録した作品も、『民主文学』本誌だけでなく、『名古屋民主文学』に発表したものも含まれています。
彼のなくなった配偶者の方も、「藤林和子」の名前で小説を書いていて、『原発の空の下』(東銀座出版社、1999年)という作品があります。
その妻を亡くした男を主人公にした作品も、『成田で』のなかには多く含まれていて、作者にとって、その体験が重要なものであったことをうかがわせます。

さて、増田さんは、親とともに幼少期に「開拓団」として「満洲」にわたったようで、その体験に基づいた作品もあります。子どもにとっては、それが現地の人たちの土地を奪ったものだとはわからなかったのでしょうが、そのことを知ったときに、増田さんの中で、重いものがうまれたのでしょう。

ちょうどきょうは、ポツダム宣言受諾の日ですが、「敗戦」と言い立てる人たちをみていると、「今回は負けたけど次は勝つぞ」という意識を振りまいているように見えてしかたがないのです。(もちろん、そういう意味でいっているのではない人もたくさんいらっしゃるとは思いますが)ですから、個人的にはあまり「敗戦」ということばは使いたくありません。