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中国古典文学大系(平凡社)のなかの、『清末民国初政治評論集』(1971年)を半分くらいまで進めているのですが、その中に、日本亡命中の梁啓超の書いた「新中国未来記」という〈小説〉が一部収められています。
梁氏はいわば〈開発独裁〉的な立場で、清朝のもとでの改革を志向していたようですが、この小説では、1962年に〈維新50周年〉の記念式典がおこなわれ、そこで、おこなわれた歴史を振り返る講演の筆録というかたちで、中国の未来像をえがこうとしています。作品は1902年に発表されたので、〈維新〉が1912年におきるというのは、偶然ながら、中華民国成立を予言してしまったかっこうになりました。
それはそれとして、未来記という形式は「雪中梅」を思い起こさせますし、作中の議論は「佳人之奇遇」をほうふつとさせます。梁氏は日本でこれらの政治小説を読んでいて、その形式を自分の作品に反映させたのでしょう。この時点では、政治小説は日本では過去のものとなりつつあったのですが、こうした形で中国に影響がおよんだというのも、少し妙な感じもします。