担い手

初田亨さんの『都市の明治』(筑摩書房、1981年)です。現在ちくま学芸文庫に『東京 都市の明治』として収められているものの親本です。
建築というのは考えてみれば不思議なもので、「江戸城を作ったのは?」「大工さん」という冗談の問答がありますが、いくら設計する人がいろいろな新機軸をうちだしていても、実際に施工するのは業者さんなのです。西洋の煉瓦造りをまねた銀座の街区にしても、煉瓦をきちんと積める職人さんがいなければ建物は完成しません。これはのちに初田さん自身が、『職人たちの西洋建築』という本で追求していくテーマなのですが、その萌芽は、この本にもみられます。
ヨーロッパの技術を導入するときに、それを消化できる技術力が日本人の中にあったことは、きちんと理解しておかなければならないのですが、それが単純な江戸時代の賛美になってもいけないのでしょう。