確信

尾崎秀樹ゾルゲ事件』(中公文庫、1983年、親本は1963年)です。
著者はご存知でしょうが、この事件で死刑となった尾崎秀実の弟で、そういうこともあって、事件の概要と、関連する人物について、簡潔に記述しています。
全面戦争へと傾斜していく中で、たしかにソ連との戦いが起きるかどうかという点が、直接的には彼らの関心のもとになったわけですが、諜報活動が、日本をどうするのかということと、緊密にリンクしているようなところがあります。
変革の立場にたった日本と、新しい中国と、ソ連とが共同していくというのは、ソビエトロシアへの過大評価はあるでしょうが、そこに未来をみていたことは、知っておくべきことなのでしょう。

最近、テレビで後藤新平の震災復興計画の話が放送されたようですが、この本では後藤は、台湾の植民地統治に辣腕をふるった人物として登場します。中条百合子ソ連訪問のときにも、査証の保証人だか何かにもなっているわけで、後藤というのは、一面化できない人なのかもしれません。

たまたまなのでしょうが、二人の「ともひろ」さんについて、考えというほどまとまってはいないのですが、二人を分けたものはなんだったのかということが気になります。二人とも、根っこの感情はそんなに変らないような感じもあって、それがどうなのかということですね。かつて、五日市のあの被告が話題になったとき、同世代の人たちがいろいろと考察していったような感覚は、こんどは彼らの世代が前面に出て、語っていくことなのでしょう。