不公平

中国古典文学大系の『今古奇観』の巻には、ページ数の都合でしょうか、元のはじめころに書かれた「嬌紅記」(伊藤漱平訳)という作品が一緒に収録されています。
北宋の末ごろ、申純という青年が、母方の叔父の王さんのところを訪れ、そこの娘の嬌娘と恋仲になります。ふたりは結ばれるのですが、正規に結婚を申し込むと、叔父はいとこ同士の結婚はだめだといって、話をだめにします。その後、いろいろとあって、いったんはふたりが晴れて夫婦になれるかというところで、嬌娘に縁談が持ち上がり、叔父はそれを認めてしまいます。ふたりは悲嘆にくれ、嬌娘も申純も、最後には死んでしまうのです。
という悲恋話なのですが、純愛かと思ったら、申純には都になじみの妓女がいるということになっていて、その女性が、嬌娘への縁談にも無縁ではないという展開になるのです。
嬌娘のほうは、操を申純にささげたというのに、彼のほうではそうでもなかったというのでしょうか。旧中国のことですから、こういうこともあるのでしょうが、少し興ざめなのが、正直なところです。