二人三脚

越広子さんの『山襞』(民主文学館、光陽出版社発売)です。
越さんは、1930年生まれで、富山で作品をかいていらっしゃいます。この本も、『民主文学』掲載作品と、『野の声』という、民主文学会の富山支部の雑誌に掲載したものとで構成されています。
ほとんどの作品が、戦時下と戦後直後の時代を舞台にしていて、戦時下に大阪の航空機工場に就職した若者を主人公にした作品や、その父親とおぼしき、金属加工の名人職人を主人公にした作品があります。
一方、戦後まもなく、共産党の活動に加わる女性を主人公にして、レッドパージの時代を生き抜くものもあります。
この若者と女性とが、結婚するようで、その新婚生活に取材した作品もあります。
戦時下から戦後の難しい時代を、それぞれの形で生き抜いてきたこのふたりが、作者と配偶者さんなのかはこまかいことは存じませんが、この二人が、協力し合ってその後の時代を作ってきたのだということが想像される作品集になっています。作品にされていない、そうした二人の生活も、そのうち読んでみたいものだと思わせます。