定住

瀬戸内寂聴さんの『場所』(新潮文庫、2004年、親本は2001年)です。
作者の生涯を、自分自身でたどりなおして、そのときの場所を再訪するという流れの作品です。もちろん、いろいろな曲折のあった作者の人生なのですが、作品を支えているのは、そうした漂泊する作者のおもいを支えている、その地に定住している人たちの存在だと思います。それは、寂聴さんが現在「有名人」となっているということもあるのでしょうが、意外と、彼女のことを覚えている人や、近親者からゆかりがあることを聞いている人が登場しているのです。
そうした人たちの、日々の営みという生活のうえに、小説家という職業も成り立つのでしょう。