受け継ぐべきこと

佐藤静夫さんがお亡くなりになられたという連絡を受けました。
佐藤さんは1919年生まれで、リアリズム研究会のころから文学運動の中心にいらっしゃり、文学同盟創立のときには、最初の『民主文学』編集長をつとめ、その後も、文学同盟の副議長を何期にもわたってつとめていらっしゃいました。
個人的には、1982年の名古屋で行われた全学連の12月集会のときに、文学の分科会で野上弥生子の『真知子』について講演をしていただいたことが記憶にあります。
佐藤さんの仕事は、民主主義文学を、日本の文学史のなかに正しく位置づけることに大きな貢献をしたのだと思っています。初期の著作の『戦後民主主義文学運動史』(啓隆閣、1968年)は、結局この1冊だけで中断してしまいましたが、1950年あたりまでの民主主義文学運動の概観として、貴重なものになっています。
また、『戦後文学の三十年』(光和堂、1976年)は、戦後の日本文学を、全体的にとらえたもので、そうした広い観点からのまとまったものは他にはなかなか見当たりません。
その点では、民主主義文学もきちんと文学状況のなかに位置づけた、戦後60年あまり経った現在の、文学史が書かれなければならないのでしょう。それをなしとげることが、佐藤さんの仕事をきちんと受け継ぐことにもなるのでしょう。