切り口

『Modanizumu』(入力ミスではありません)という本の話です。
といっても、手元にはありません。手にとって、みせてもらったものなのです。失敗したことに、ISBNコードもメモしてこなかったので、書誌情報もはっきりとは覚えていないのですが、ハワイ大のプレスだったような。
内容は、20世紀前半の日本文学の英訳のアンソロジーです。
オハイオ州立大学の准教授で、今京都の国際日本文化研究センターの客員研究員となっているウィリアム・タイラーさんが、収録する作品を決めています。
梶井基次郎の「檸檬」や、横光利一川端康成江戸川乱歩などのおなじみの名前もありますが、阿部知二の「日独対抗競技」だとか、伊藤整の「幽鬼の街」のような、新興芸術派の人たちや、武田麟太郎の「日本三文オペラ」や石川淳の「マルスの歌」のような、「モダニズム」ということばで連想するのとは少し違った作品も収められています。
タイラーさんは、土曜日の「中村真一郎の会」で講演をされ、そのあとの懇親会に出席されたときに、この本を持って、参加者に紹介していたのです。
こうした本で、日本文学に出会う、アメリカの読者の方が、1920年代、30年代の日本社会の一端を同時代のアメリカと比較してくれるのでしょう。石川淳の作品がアメリカに知られることで、日本の社会のもつ、ある種のしなやかさがわかってもらえれば、日本に対するイメージも変わるかもしれません。