迫ってくる

『燃えあがるスペイン』(吉永瑠美・梶知子訳、東邦出版社、1969年)です。
スペインの「内戦」を経験した、外国人の作家やジャーナリストの文章を集めて、共和国崩壊のプロセスを追っています。なかでも、空爆直後のゲルニカのルポは、当時のなまなましさと、その事実を隠蔽しようとするフランコ側の意図とを暴露して、迫力をもっています。
スペインでフランコが共和国に反旗を翻したときに、イタリアやドイツが公然と支援をしたことは知られているでしょう。それと同じとき、ナチスドイツはベルリンでオリンピックを開催し、アテネからベルリンまで聖火リレーを実施したのです。もちろん、ナチスユダヤ人敵視政策は、世間の知るところでしたから、ヒトラーは、オリンピックを無事開催するために、差別的な政策を一時的に緩和したらしいのです。
国内ではそうしたことをしながら、スペインでは反乱軍を支援する、それを当時の国際社会は黙認したわけです。
選挙で成立した政権への軍の反乱といえば、最近ではチリのケースを思い出します。チリは首都を一気に制圧して決着をつけたのですが、スペインではそれができずに、長い年月を使い、なぶり殺しのような事態もおきたということでしょうか。
スペインというと、オーウェルやらドス・パソスやらの文章で、内部対立の、それもPOUMからの面ばかりがクローズアップされる向きもないではないのですが、フランコ体制の攻撃には、そうしたことをわざわざ言い立てることがどれだけの意味があるのでしょうか。
と、きょうのニュースを聞きながら、考えてしまいました。