もどかしい

アメリカの言語学者、サピアの著書、『言語』(安藤貞雄訳、岩波文庫、1998年、原著は1921年)です。
サ氏はアメリカ先住民の言語の研究によって、言語とは何かという枠組みについていろいろと考えた結果を、この本にこめたようです。
実際、世界中の言語を、印欧語族に代表させるわけにはいかないのですが、そうした社会と結びついた言語の発想を、著者は言いたいようです。
けれども、この本には日本語についての言及がまったくといっていいほどないので、その点では、日本語をどのように著者が位置づけるつもりでいたのかがわからないのも、残念なことです。
そういうわけで、内容についての感想はあまりいえないのですが、接頭辞や接尾辞についての言及のところでは、富士谷成章のいう「かざし」や「あゆひ」という概念が思い出されたり、世界的に重要性をもっていた言語が、古典中国語・サンスクリット・アラビア・ギリシア・ラテンの五つであると言い切っているところなど、80年経った現在では英語を入れられるかどうかということを考えたり、枝道にはいるような思考しかしなかったような気がします。

「長寿医療」などという、わけのわからないことばが発明されて、NHKなどは、もともとの用語も、新しい通称もどちらも使わないで報道するという、情けない状態ですが、昔、「E電」なることばを使わせようとしたけれど、ちっとも使われないですたれたということがありますから、政府が「長寿」などといっても、きっとメッキははげるのではないでしょうか。