抽象性

加藤周一対話集の6冊目、『憲法・古典・言葉』(かもがわ出版)です。
憲法をめぐって、ドイツにおけるナチスは異分子だったが、日本の戦争遂行勢力は決して異端ではなかったという指摘も大事なことだと思いましたが、高畑勲さんとの対談で、日本のアニメーションの伝統を、仮面劇としての能と、人形劇としての文楽にみるという視点には、盲点をつかれた感じがしました。
アニメが、実写とちがうところは、たしかに役者の「個性」というものを捨象するところにあるわけで、声優さんが個人的なスキャンダルをどうのこうのという話はほとんどありません。
木下順二さんは、シェイクスピア近松とは同列には評価できないと、どこかでいっていたような記憶があったので、ついつい文楽も過小評価していた面も、あったのかもしれません。
そういえば、動物を擬人化する、「鳥獣戯画」以来の伝統も、日本人の特性だと、『趣都の誕生』の著者の森川嘉一郎さんが書いていた記憶がありますが、そうしたこととも関連するのかもしれません。
日本文化の伝統自身も、もっときわめなけれはいけないのでしょう。