もう一つの秩序

ついつい、一気に読んでしまったのですが、軍司貞則さんの『高校野球「裏」ビジネス』(ちくま新書)です。
軍司さんは、社会人野球のクラブチームも運営していて、実際に野球の世界にもかかわっているということもあって、関係者に取材をしながら、少年野球(中学生の硬式野球)の世界と、高校野球とのかかわりの状況を考えています。
実際、プロ野球を頂点として、下は小学生にいたるまでの、野球世界というべきものがあって、それはある意味、学校教育とは別の世界をつくっているようなところがあります。それが、透明なものならばいいのですが、何せトップにたつべきプロの世界が、昔から選手獲得のためにはなりふり構わないというところがあって、それがいろいろと問題を生み出す土壌になっています。最近でも、大学野球の有力選手に、プロからいろいろな名目で金品が渡っていたことがありました。
そうした世界と、学校教育の世界がからみあう。そこに、わが国の教育行政の貧困さがあって、私学を運営するには、経営の観点も必要になるということも関係します。軍司さんの本では、政府与党の議員のなかに、高校野球の現状に対していろいろと注文をつける人たちがいるということですが、(その中には実際に甲子園に何度も出ている学校を経営している人もいます)、そうした人たちが、たとえば助成を増やして経営を安定させるという方向に向けるような、そうした解決策を提示することはなさそうです。
単純に、スポーツの技量がある少年が、すなおにその力を発揮できるような環境を作るのは、おとなの務めではあるでしょう。それをやりやすい世界が必要です。実際、とかくうわさがある「元プロ選手」の人もいるようですが、裏を返せば、「元プロ」であっても、それをすなおに出して世の中を渡るのがむずかしい状況が、一方ではあるということですから。