がっぷり四つ

吉田裕さんの『アジア・太平洋戦争』(岩波新書)です。
日米開戦から敗戦までの時期をあつかった、コンパクトな本で、実証的なデータも使って、あの時代を上手にまとめています。あの戦争を弁護する立場の人も受け入れざるを得ない内容ではないかと思います。
それで、データによると、1942年あたりまでは日米の空母や航空機の力量は拮抗していたとか、ガダルカナル攻防戦のときも、海上兵力の損耗に関してはほぼ互角であったとかいうことだそうです。たしかに、子どものころに読んだ戦記物でも、ミッドウェー以外の海戦は、決して敗北とはいえないものです。
ただ、互角ではあっても、勝利とはいいきれない(真珠湾は別です)ところが、最初からの問題だったのではなかったか、ということです。吉田さんの本でも、開戦直後のウェーク島攻略で守備隊に駆逐艦が撃沈される(マレー沖海戦の逆ですね)とか、バターン半島攻撃の問題とか、挙げられているわけですが、珊瑚海海戦も相打ちのようなものだし、そこからきちんと教訓を出せなかったこと、〈敵をみくびる〉傾向が、最後まであったということでしょうか。
そうした傾向は、最近のオリンピックやらなんやらの、スポーツ報道の世界でもみられなくはないような感じがあります。そっちのほうが、現代にもつづく問題かもしれません。