他人事ではなく

ロイ・メドヴェージェフ『1917年のロシア革命』(現代思潮新社、1998年、石井規衛、沼野充義監訳、原本は1997年刊行)です。
この方は、ソ連時代から、「少数派」として発言をしてきた方で、岩波新書でも、『ソ連における少数意見』という本を出しています。けれども、ずっとロシアにとどまって生きてきたということで、国外追放になったソルジェニーツィンとはちがった生き方をしています。
この本では、ロシア革命80周年を機に、あらためて当時の状況をふりかえってみようとするもので、レーニンがとった政策の誤っていた点を指摘しています。十月革命の段階では、ボルシェヴィキは信望をあつめていたのに、1918年の春の段階でまちがった路線をとってしまい、内戦を誘発したのだというのです。
細かな歴史的事実とか、評価についてはいろいろとあるのでしょうし、一般的なことしか知らないので、こうした指摘については、教えられることも多いのですが、「ロシア革命によって生まれた思考・価値体系の中で育った。われわれにとってロシア革命は、歴史であるだけでなく人生の一部分である」と序文で筆者が語る、その意識が、歴史的事実を現代につなげるものとして大切なものだと受け止めることができるのです。歴史というものは、本来そういうものなのでしょう。たとえ他国の歴史であっても、それは「いま・ここ」と無関係ではないのだと、心してかからなければならないのです。