ここがロドスだ

『若者の労働と生活世界』(本田由紀編・大月書店)です。
現代の若者が置かれている状況をフィールドワークして、その実態を検証しようとしているものです。コンビニの「店長」、介護の現場、「進路支援」となっている中等教育の進路指導、大学生の「就活」の学校ブランドのありよう、『地元』意識の問題、過食症にみる「かんばらないこと」と「かんばって治すこと」の相克、『援助交際』の実態、『若年ホームレス』にみる「溜め」の欠如、とさまざまな側面にわたる論点は、示唆に富むものであります。
その中から見えてくるのは、さまざまな「現場」に責任をおしつけて、実際には何もしようとしない〈政治〉の姿です。〈現場〉の人たちは、直面する事態に対して、できるかぎりの努力と実践で、なんとかこの社会を維持しているのではないかという感じがするのです。しかし、そうした「努力」も、「自己責任」論のなかで押し流されようとしているのです。
それに対抗するにはどうするのか。もちろん、この本は研究の材料を提供しているのであって、そこから先は、ひとりひとりが、考えていくことなのかもしれません。考える材料は、もう出そろっているともいえるのでしょう。
「ストップ貧困」というスローガンが、このとき身近なものとしてあらわれてくるのです。