影響力

日付は変わってしまいましたが、昨日は芥川の80周年の日なので、関口安義さんの『世界文学としての芥川龍之介』(新日本出版社)です。
関口さんは、10年ほど前の『特派員 芥川龍之介』(毎日新聞社、1997年)あたりから、積極的に芥川の社会性を追求しています。いままでの芸術至上主義というレッテルをはがして、芥川の時代との格闘をさぐろうとしています。
この論文集も、そうした方向にあるもので、個々の作品を通して、新しい芥川を見ています。

芥川といえば、宮本顕治の「『敗北』の文学」が思い浮かぶわけで、ひょっとすると、あの論文が、芥川理解のひとつの流れをつくったのかもしれません。芥川は「批判」の対象としてみるべき作家なのだと。一方では、中村真一郎がどこかで書いていたのですが、西沢隆二が戦後、芥川が亡命でもして生きていればいまごろトーマス・マンのような権威をもってアカデミーの総裁くらいになれたのに、という趣旨のことを語っていた(細かいことは正確ではありませんが)という評価もあって、そういうことも考えると、もっと読むべき作家なのでしょう。