土台

大西広さんの『中国はいま何を考えているか』(大月書店、2005年)です。
日中関係を、経済的な側面から考えることで、将来の東アジア共同体が可能かどうかを考えるというスタンスです。日本・韓国・中国を平均所得の順に並べると、日本の諸地域、韓国の諸地域、中国の諸地域と、ゆるやかなカーブをもちながら並んでいくという分析は、なるほどと思わせます。
小泉さんが靖国参拝をすることを、当時の経団連の会長が諌めたという話も紹介されていて、経済的な要因が、政治や外交を動かしていくことがあるのだということも、わかりやすく説明されています。
大陸と台湾との交流も年々深まっていて、大陸に進出しているあるコーヒーショップでは、そのメニューには、「中国台湾省」と書かれ、英文でも「P.R.C」と、「中華人民共和国」の略称が記されていたというのです。
こういう状況のもとで、「台湾海峡有事」などといって、装備を増強しようとたくらむのは、どう考えても変ですよね。
人間は実利で動くものであるという割り切り方ができるかはともかく、実利と結びつかない理念は定着しないということでしょうか。そこに、経済的土台が上部構造を規定するということのもつ複雑さもあるのでしょう。