身をおいてこそ

芝憲子さんのエッセイ集『沖縄の反核イモ』(青磁社、1986年)です。
と、えらそうに紹介しましたが、実はこの本、古本屋の一山百円のところから掘り出してきたのです。そのときは、著者についてもよく知らず、タイトルと目次と初出とをみておもしろそうだと思って買ったのですが、期待を裏切らないものでした。そこで、いろいろと探索したところ、なんと、このエッセイ集は詩人会議主催の壺井繁治賞の受賞作品だったのです。芝さんは、「九条の会・詩人の輪」の呼びかけ人としても活躍されています。知らなかったことは罪でしたね。
内容は、1980年代の沖縄の現状や、それと関連した著者のいろいろな考えです。沖縄の反戦地主のひとたちの姿など、詩論でいえば、沖縄出身の山之口貘のことなど、考えさせる文章がはいっています。
その中で、芝さんが詩人会議にはいったことに関して、こんな文章がありました。「『詩人会議』に入ったのだから、詩壇的には「政治的すぎる」といわれるにしろ、逆にもう自由に何でも書けるのだ、どんなに政治的なことを扱った詩でもちゅうちょなく書けるのだ」というのです。
詩人会議にしろ、民主主義文学会にしろ、そういう点でのタブーはありません。本当に自由にものを書きたいのなら、そうした仲間と、一緒にやるものだという、簡単ですが基本的なことを、改めて認識させられました。