人生経験

岩波書店のPR誌の『図書』12月号に、岩橋邦枝さんが「弥生子と百合子」というエッセイをよせています。(原文では〈弥〉の字が旧字体になっていますが、便宜上新字体でいきます)
野上弥生子宮本百合子との関係について記しているのですが、当時平林たい子が、女性作家は離婚を経験しなければ大きくなれないという趣旨のことを書いていたそうです。そうすることで人生経験が深まり、作家としての成長につながるということだそうです。
確かに、宮本百合子佐多稲子林芙美子もそうなるのか、とか現存の作家の方では瀬戸内寂聴さんなどが該当するのでしょうが、それとはちがう、知識階級のありようとして野上弥生子のことを岩橋さんは書いています。
1930年代くらいの状況では、野上弥生子宮本百合子とが、女性作家の中では抜群の知識層出身の作家であったことは否めません。その点では、現在の作家たちとはちがっているという岩橋さんの指摘はそのとおりだと思います。
意見には承服できないことの多い方ですが、三浦朱門さんと曽野綾子さんのご夫婦のようなケースも珍しくない今では、離婚の問題にしても、ちがったみかたができるのかもしれません。