多様性のあること

清水美知子という方の、『〈女中〉イメージの家庭文化史』(世界思想社、2004年)です。
いわゆる女中というものが、どのような社会的なイメージをもっていて、どのような扱われ方をしていたのかを当時の文献からさぐっていった本です。家事労働が、そうした人たちの手によって担われていた時代には、主婦の仕事は、家事全般の経営と、女中たちの管理という側面、また、女中に対して、家事のあれこれや社会的な対応(客の応対やら電話のかけかたなど)を教えるというある意味では教育的な役割をもっていたということもあるようです。
それが、女中の仕事が社会から消えていく中で、家庭が家族だけのものになり、他者の目がはいらなくなると、それまで存在していたある種の配慮や遠慮が家庭の中から消えていくという面も見なければならないというのです。また、家事労働が主婦によって行なわれることは、家事労働自体が、アマチュアの仕事になっていく、そしてそれによって家事労働が「無償」のものだと感じられるようになっていくということにもつながるというのです。
そういう点では、家事労働の位置づけや、家庭(家族ではなく)のもつ意味について、考えるきっかけにはなりそうです。今の社会のなかで、家族さえも信じられないような、つらいできごとを報道によって知らされる時代だからこそ、ですね。