今月の裏時評

とはいっても、島本理生は書いてしまったので、今回はそんなに足して語るほどのものはないのです。
強いて言うなら、『すばる』の青野聰「海亀に乗った闘牛師」くらいでしょうか。こうした異界にはいりこむ話は、カフカの「城」ではありませんが、元の世界になかなか戻れないものが多いのですが、これは、しっかりと日本に戻ってきて、なおかつ記念品の刃物を成田空港の税関で没収されるという、そうしたところがおもしろいのでしょうかね。文明論でもあるし、その中に生きる中年男のありようでもあるし、悪くない作品ではあったかと思います。