恫喝と強制

森与志男さんの『普通の人』(新日本出版社)です。
2003年4月から2005年3月までの2年間を舞台に、東京都立の高校での主人公たちの生活を追った作品です。主人公は50代なかばの男性教師で、妻をなくしてからずっと、独身を通して子育てをしてきたのですが、その子どもも結婚して独立して地方に住んでいるので、彼はひとりぐらしをしています。
その彼の目から、2年間の都立高校をめぐる〈事件〉が描かれます。それは、式典における国歌斉唱の強制なのです。教育委員会がいかに校長などの管理職にしばりをかけているか、学校内でどのようにして個々の教師に対して強制していくのか、そのありようが書かれます。合意と納得ではなく、恫喝と強制がそこにあります。
それがはたして「教育」なのか。そこへの作者の痛烈な問いかけがあります。
読んでいてつらい場面もありますが、でも、目をそむけるわけにはいきません。