気持ちもわからないではないが

本の話とは直接いえないかもしれませんが。
教学社という出版社があります。といっても、名前だけではなじみがないかもしれませんが、「赤本」を出しているといえば、わかる人もいるかもしれません。大学入試の過去問を出版しているところです。
来年の受験用に出ている、センター試験の国語をみてみたのですが、案の定、今年の第1問(評論文です)が〈省略〉されていたのです。
出題は別役実の文章からなのですが、今まで共通一次時代から、こうしたことはなかったので、初めてのことでしょう。
理由はたぶん、著作者の了解が得られなかったからだろうと思いますが、最近、そういう、教科書や入試問題につかわれた文章を、こうした副読本やドリルなどに使用することに対して、著作権者側が強硬な態度に出ているように感じます。
お金の問題ですむのなら、単純なのですが、どうも、自分の文章を切り刻まれ、解釈されることへの嫌悪感が底流にあるような感じがします。
昔も、著者が入試に出題された自分の文章を解いて、正解でなかったので、「出題者はおかしい」といわせる企画がありましたが、そうした読み方が可能な文章を書いたのだから、それはそれとして受け止める度量も必要なのではないのかとも思うのです。
この問題は微妙なので、深入りはしたくないのですが、作品と批評家との関係にも、これと似たようなところがあるのかもしれません。