回避すること、できないこと

近所の古本屋で、『栃木県近代文学アルバム』(随想舎)という本を見つけました。2000年に出たものです。最初が、江口渙の原稿をカラー写真にしたものが口絵になっています。芥川の手紙をめぐる文章のようです。
そういうことからもわかるように、栃木県ゆかりの人たちを中心に、観光地としての栃木県という面からのアプローチもされています。たとえば、田山花袋国木田独歩が日光に滞在していたことがあるので、二人についてもページが割かれているといったように。『金色夜叉』の塩原の縁で尾崎紅葉もあります。
そうした中で、江口渙の存在は大きなものがあるようです。けっこうページも割かれているし、江口さんあての手紙や、地元で発行した新日本文学会支部誌へ寄せてくれた諸家の原稿の写真とかもあります。
そういう点では評価していいものだと思うのですが、江口さんが初代議長をつとめた文学同盟に関しては、あまり写真もないのが残念なところです。せめて、創刊号か、追悼号の表紙でも載せてくれてもよいのにとも思います。『たたかいの作家同盟記』(新日本出版社)の単行本の表紙は写真になっていたり、記述のなかで『少年時代』が『民主文学』に掲載されたという記事はあるのですが。
そういう点で、回避されていることもあるのだというのが、実際のところですね。

しばらくヒロシマに行きますので、更新はお休みです。