基地の島

山城達雄さんの『監禁』(光陽出版社)です。
山城さんは、1989年に、「遠来の客」で新沖縄文学賞の佳作を、1998年には「窪森(くぶむい)」で入賞を果たした、沖縄の作家です。その作品と、『民主文学』に発表した短編を集めた短編集です。
この作品集に収められた「被弾」という作品に登場する、山形という男は、妻と娘を交通事故で亡くして、〈癒し〉を求めて、新婚旅行の思い出の地である沖縄をたずねます。そこで、タクシーに乗って、北部へ向かうのですが、その途中で、演習中の米軍の銃弾で、タクシーが被弾します。そして、山形は、運転手の西原とともに、基地の島の実態にふれていきます。
この作品が表現しているように、観光の島としての沖縄、民俗学的な興味をもつ沖縄(やはり収録作の「迷彩顔」では、魂込めという儀式が描かれています)という側面だけではなく、米軍支配下の沖縄、いまでも基地の島である沖縄、というところを山城さんは書こうとしています。その点で、芥川賞をとった沖縄在住の作家たちとは、共通する面もありますが、違った側面も持っているのかもしれません。
表題作の「監禁」は、米軍に雇用されている労働者たちが労働組合を作るのですが、米軍の許容する範囲内での労働運動を主張するグループに対抗して、役員選挙に出ようとする青年が、選挙の直前に米軍に拉致監禁されて、結局選挙に出られないどころか、人民党と通じたという理由をつけられて解雇されてしまいます。
そうした非道を、山城さんはしっかりと見つめています。そうした沖縄の歴史について、もっと知らなければならないのでしょう。