若書きの強さ

講談社の文芸文庫の新刊のなかに、『1946・文学的考察』がはいっています。加藤周一中村真一郎福永武彦の三人が、それぞれ〈焦点〉〈時間〉〈空間〉というカテゴリーのなかで書いた文章をまとめたものです。
読んだのは冨山房百科文庫(新書判ですが)だったので、今回は買ってはいないのですが、店頭で見ると、その冨山房版についていた篠田一士の解説まで参考資料として収録されているというのは、それはそれで便利なのかもしれません。
戦争が終わった直後のことなので、彼らの発言には、戦争をひきおこした勢力と、それに便乗した人たちへの批判が強烈です。また、そうした人たちの、文学史への一面的な理解に対しての批判も、のちの彼らの到達から見れば、けっこう過激すぎる側面もあります。
けれども、そうした限界を超えて、その後の彼らの創造活動につながるさまざまな契機をこの本から読むことができます。久しぶりに今回冨山房版を読み直して、古典に学ぶ態度と、現実への批判精神に感動した、当時の大学合格したばかりの自分を思い出しました。