未来を信じよう

青井傑(あおい・まさる)さんの『東山道武蔵路』(光陽出版社)です。
作者は、教師を長く勤め、その間労働組合運動や平和運動に尽力した人です。本格的に執筆をはじめたのは、ここ何年かのところだということです。
作品集に収められた作品は、平和運動に題材をとったものや、子どもたちの現実に触れたものがはいっています。そこに流れるのは、平和を守る問題にしても、戦争への告発にしても、子どもたちをめぐる現実にしても、現在を単なる現在としてみるのではなく、そこに未来を見ようとするのです。
瓦職人を登場させる作品が二つあります。それは、原爆でなくした妹の名前を瓦に刻んで焼くものであったり、空襲で失った婚約者の名前を瓦に焼くという、(同じ行動をそれぞれとるというのが、ある種の重複ではあるのでしょうが)、戦争の被害を告発するものであるのですが、その名を瓦に焼き付けることで、それは未来に向かってのメッセージとなっていくのです。
それは、平和運動、米軍基地の騒音被害を訴える運動にもつながります。未来をみる視点を、青井さんは保持しているのです。