旧中国と西洋

『現代中国文学』のことの続きです。
李劼人(り・かつじん、1891-1962)の作品に1冊があてられています。清朝末期の四川省を舞台にした作品で、三部作のうち最初の二つ「死水微瀾」「暴風雨前」というタイトルがそれぞれついています。これはいかにも中国文学らしい、スケールの大きな歴史小説です。外国人におびえる旧支配層と、無知の状態におかれているがためにいわれなき恐怖を外国人から受けている民衆、その中での個々の家族の生き方が描かれます。
西洋の勢力が中国に入ってくるときに、当時の支配階級が、いかに西洋のものや人に対して不条理なほどのおそれを抱いていたのかについては、旧小説に属する『官場現形記』によく描かれています。これは、平凡社の〈中国古典文学大系〉のシリーズに入っているのですが、これと今回の李劼人の作品とを読み比べると、19世紀末から20世紀初頭の、清末の中国社会が浮かび上がってくるのです。