『智取威虎山』のこと

前回の続きですが、曲波の『林海雪原』は、第2次大戦終結したあとの、解放戦争の時代の東北地方を舞台にした作品です。ここでは、解放軍のたたかう相手は、「匪賊」と呼ばれる暴力集団です。かれらは、偽満州国時代は、日本側と適当に取引をして生き延び、現在(作品世界での)では国民党と結託しようとしているのです。それを解放軍の小部隊が、知恵と意欲とで打ち破っていくという話なのですが、その中で、匪賊の根拠地のひとつである威虎山に、楊子栄という解放軍の将校が、匪賊の一味になりすまして侵入し、内側から相手を倒すという場面があります。
そこを劇化したのが「智取威虎山」で、毛沢東の妻だった江青という俳優経験をもった人が、「革命的現代京劇」の題材としてとりあげたのです。
ちょうど文革末期の1976年(だったと思う)に、その革命京劇一座が日本にやってきました。そのころ私は、神保町の東方書店によく行って、中国直輸入の本やら、『人民中国』のような日本語雑誌やらをながめていた高校生でした。で、その『人民中国』誌に、その革命京劇が取り上げられていたのです。ただし、原作の『林海雪原』の名前があったかどうかは記憶していません。そして、その「智取威虎山」が、NHKの教育テレビで録画中継されたのを観た覚えがあります。細かいところは覚えていないのですが、ムチを使うことで馬に乗っている様子をあらわす演技などは、印象に残っているような。
で、今回『現代中国文学』のシリーズで、『林海雪原』を読んだ時に、解説にそれがふれられていましたし、読んでいくうちにその演劇も思い出したというわけです。
この前、「批評を考える会」でリアリズム研究会をとりあげたときに、『現実と文学』誌を拾い読みしていたら、『林海雪原』の紹介文がありました。このシリーズより前に、翻訳されていたようです。