封印

『そこに僕らは居合わせた』(パウゼヴァング著、高田ゆみ子訳、みすず書房、2012年、原著は2004年)です。
1933年から45年の間のドイツがどんな社会であったのかを、当時少年少女たちだったひとを登場させて描いた作品集です。21世紀になって、学校で当時のことを聞いておきなさいといわれて、祖母にあれこれと問いただすうちに、そのころの人たちがどのように〈手を汚してきた〉のかがあぶりだされる、というところでしょうか。
つながってはいない、というのが公式ではあるのですが、そこに住み続けてきた人がいるのは間違いないことですし、その間に東部国境がずれたことによって生まれた〈移住〉もあったのですし、いろいろな隠れたことがあっても不自然ではないでしょう。そこを、作品の形であらわにしていく、というのもつらいことではないかとも思います。