構想

二葉亭全集の〈評論・感想〉の巻です。
茶筅髪」は未発表の原稿だとこの前書きましたが、二葉亭はこの作品の構想を文字にして語っているのですね。「未亡人と人道問題」という談話筆記でしょうか、『女学世界』という雑誌に載ったようです。
そこでは、主人公は戦争で夫を亡くしたのですが、友人の夫と最後には関係を結ぶんだそうです。男性に頼らざるを得ない当時の女性の弱さを描こうとしたのでしょう。
そこはわかるのですが、それが〈姦通〉という形でしか表現できないところに100年前の社会があり、それが結局作品を未発表のままにせざるを得なかったということなのでしょう。
第二次大戦のときの〈未亡人〉の問題というなら、徳永直にも「あぶら照り」という作品がありました。とにかく生きなければならないときに、何が必要なのか、そこはきれいごとではすまないということでしょう。二葉亭はキリスト教に解決策を見いだせず、徳永は科学的社会主義によりどころを見つけようとした、そうした違いもあるのかもしれません。