耐える

最上裕さんの『陸橋の向こう』(民主文学館)です。
最上さんは、電機の職場にいながら作品を書いてきたかたで、この作品集にも、そうした職場の現状が反映されています。
中心になるのは、〈陸橋〉ではじまる、表題作も含めた3つの作品で、〈東邦電機〉という職場での、人減らしとそれに立ち向かう労働者の姿が描かれます。〈希望退職〉を選ばされる側の苦悩もあれば、退職を強要する側にも苦悩はある、さらには強要をはねのけて職場に残っても、いやがらせは続く状況と、いまの職場をめぐる荒廃ともいうべき姿が現れてきます。その中で、どのように人間としての誠実な生き方ができるのかが問われるのでしょう。それは、企業側にたつ人間にも、家庭人としてではなく企業の中でどのように誠実さを発揮できるのかという問いかけにもなります。
株価だけはあがっても、それは何なのか、そうしたことも考えさせられるのです。