システムの構築

曲亭馬琴『近世物之本江戸作者部類』(徳田武校注、岩波文庫)です。
馬琴が生前公刊せず、筆者で近しい人たちに流布させたというもので、当時の文学史ともいうべき本です。草双紙の起源から洒落本、滑稽本、読本と、作者の略歴を紹介しながら、山東京伝や自分がつくりあげる読本全盛期へと筆をすすめます。
作者はもちろん、版元なくしては本が出せないわけで、最初は版元が、作者に対して一席設けるくらいだったのが、だんだんと潤筆料を払うようになっていくプロセスが記されます。すると、武士や町人がなかば趣味のような形で書いていたものが、職業として立ってくる、そうした出版業界のおこりにもなるわけです。
また、作者の中には、いまでいう自費出版のように、版元に原稿をもちこみ、自分でお金を出して本にしてもらった人もいるとか。
18世紀から19世紀にかけての江戸の、ある意味爛熟した世界が、ほの見えます。