日々のいとなみ

佐伯一麦さんの『杜の日記帖』(プレスアート、2010年)です。
この版元は仙台の出版社で、ここが出している雑誌に掲載されたエッセイをまとめたもののようです。新書判ですが、著者撮影のカラー写真などもあって、けっこうぜいたくな造りです。
地震の前ですから、穏やかな日常が描かれます。作品でいいうと、「鉄塔家族」から「ノルゲ」をへて、「還れぬ家」の連載を始めたころにあたる時期です。こうした、作家の日常に触れることで、作品を流れる時間のありようもわかるのですし、とりまく季節の移り行きも、土地の呼吸を感じさせます。
こういう本が出せる仙台の環境は、地震のあとも変わらないのでしょうか。

十三夜のお月見の日に台風が来るというのも、けっこう最近の環境の荒れなのかもしれませんが、今年は九月に閏月がはいりますから、今年に関しては、菊の節句も、栗名月も、閏でやったほうが季節感がでるかもしれません。