試されるのは

橋川文三昭和維新試論』(講談社学術文庫、2013年、親本は1984年、初出は1970年から73年)です。
19世紀末からの日本の国家主義的思想の流れを追ったもので、中断がなければ、敗戦までいったのではないかと思うのですが、結果的には1920年代のおわりごろまでの流れで終わっています。
結局のところ、民衆に接した思想は、そこにある平等を求める意識と、国家主義的な意識とをどのようにつなげていくのかに思考の軸をおいていたということになるのでしょうか。そこに、19世紀のおわりごろに、〈明治〉から〈帝国〉への変貌をみるという、著者の立場があるのでしょう。
そうなると、やはり問題は、植民地をどう考えるのかということではないかと思うのです。中国のことは考えても、朝鮮のことは外においてしまう、場合によっては、満洲の経営をあたりまえのものと見てしまう、それにどう対応するかが、問われるのではないでしょうか。そこは、まだまだ手がつけられていないようにも思えるのです。