すっきり

池井戸潤さんの〈半沢直樹〉ものの、3作品を読んでみたのですが、3つめの『ロスジェネの逆襲』(ダイヤモンド社、2012年)になると、少し飽きてきました。ここででてくる〈ロスジェネ世代〉といっても、証券会社の第一線で働いているのですから、かつて浅尾大輔さんたちがやっていた雑誌『ロスジェネ』に登場するような世界とはやはり別物だという印象が強かったのもあるでしょう。まあ、最初の2作はそれなりに、銀行を舞台にした冒険活劇的なところもあるので、ドラマが(見てはいないので、原作と同じなのかどうなのかは知りませんが)人気が出るのもわからなくはないというところです。悪を倒すということで、すっきりするのかもしれません。

池井戸さんの『下町ロケット』という作品も思い出したのですが、これも、映画『風立ちぬ』と似ているようなところがあるようです。というのも、どちらも技術者的なところがあって、計画設計というところに重点がおかれていて、それを実際に量産して製品化するところにみられる日本的なものを、表面に出さないようにしているようにも見えるのです。
下町ロケット』の舞台は、東京の本社研究所みたいなところです。試作品はつくっていますが、量産するラインは宇都宮だかにあって、そこでは派遣労働者がラインについているようです。『風立ちぬ』のほうも、設計の部署に主人公はいて、かれらが引いた図面を、女性労働者がトレースして現場の工程にのせ、できあがった試作機は、牛のひく荷車で(たしか岐阜県各務原だと思いましたが)滑走路まで運ばれます。
そうした現場の上に成り立つ世界だということは、考えなければならないでしょう。半沢直樹にしても、融資するお金は、預金者から集めたものだということも、忘れてはいけません。